HANZO 原価分析

登壇レポート:値上げの前に、削れる原価はまだある。福しん 高橋社長が語る原価率維持の秘訣

課題
  • 食材ごとの原価差異が見えない原価管理
効果
  • 原価差異の金額が約4分の1に、売上に占める割合は2.04%から0.46%に
株式会社福しん

株式会社福しん 代表取締役 高橋 順様


  • サービスHANZO 原価分析
  • 課題業務効率化 | コスト削減 | フードロス削減
  • 業態ラーメン
  • 店舗数21〜50

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イントロダクション

食材の値上がりが止まりません。外食各社は値上げで原価の上昇をしのいできたものの、値上げを重ねた結果、客数を落とす企業が増加しています。

そうしたなかで、売上と客数をともに伸ばしているのが、ラーメンチェーン「福しん」です。福しんは、池袋を中心に東京23区北部と埼玉県で約30店舗を展開しています。福しんも、原価高騰の影響を大きく受けています。2023年を100%とすると、2026年の米の仕入れ価格は244.0%、豚肉は166.7%に上がりました。それでも主力メニューの値上げを1割前後にとどめ、2026年1〜6月の既存店売上高は前年比106.2%、客数は104.3%と、どちらも前年を上回っています。

値上げに頼らずに、なぜ原価率を保てるのでしょうか。その秘訣を探るため、2026年9月に東京ビッグサイトで開かれた「ラーメン産業展 in Japan」で、株式会社福しん 代表取締役の高橋 順氏と、当社代表取締役COOの渡邉 真啓が対談しました。高橋氏は、自社の仕入れ価格や価格改定の実績を開示しながら、本部と店舗で取り組んできた原価コントロールの中身を語っています。

本記事では、価格の決め方、見えにくいロスの正体、福しんが実践した3つの改善の順に、対談の内容を紹介します。

※本記事は2026年9月のセミナーをもとに構成しています。肩書・数値は開催当時のものです。

登壇者

  • 高橋 順(株式会社福しん 代表取締役)
  • 渡邉 真啓(株式会社Goals 代表取締役COO、聞き手)

価格は「原価の積み上げ」ではなく、市場で決める

まず渡邉が、セミナーのテーマである原価高騰の現状を示しました。帝国データバンクの調査を引きながら、2023年以降は食品の値上げが毎月のように続いていると説明。福しんの主要食材も例外ではありません。

高橋 お米は3年で約2.4倍になりました。これほどの値上がりは、過去にありません。豚肉も、約1.7倍の値上げです。チャーハンはお米と豚肉の両方を使うので苦しいところです。ライスの値上げは2割程度に抑えています。

2023年から2026年までの値上げ幅は、チャーハンが10%、手もみラーメンが11%、ライスが19%でした。レバニラ炒めは価格を据え置いています。高橋氏は、価格の決め方を次のように語りました。

高橋 価格は、原価を積み上げて決めるのではありません。「市場でいくらなら受け入れられるか」「他社と比べてどうか」で決めています。市場で強い商品は値上げし、そうでない商品は価格を抑えて、シェアを取りに行きます。

値上げを続けると、客数が離れていく

渡邉は、大手外食企業の既存店の動向を紹介しました。値上げで売上は前年を超えても、客数は前年を割り込んでいる企業が多いといいます(2025年7月〜12月)。

渡邉 売上と客数の両方が前年を超える「事業として健全な状態」を保つのは、いまの外食業界では簡単なことではありません。お客様には、ブランドごとに「この値段までなら払う」という見えない壁があります。その壁を超えて値上げすると来店の頻度が下がり、減った客数を補うためにまた値上げする、という悪循環に陥ります。だからこそ、本部も店舗も無駄なコストを削り、値上げをしないもしくは少しでも小さく、遅くする原価コントロールが重要なんです。

売上の4〜6%が、気づかないうちに消えている

では、無駄なコストはどこにあるのでしょうか。渡邉は、店舗の食材費で起きているロスを2つに分けて説明しました。1つは過剰在庫、もう1つはレシピと実際の使用量の差です。

渡邉 ある外食企業の店舗では、棚卸在庫高の34.3%が、持たなくても品切れしない在庫でした。売上に対しては2.28%に当たります。さらに、調理の工程やレシピの問題などで、レシピよりも売上比で1〜4%多く食材が使われています。合わせると、売上の4〜6%ほどが無駄になっている計算です。

高橋氏は、量が多すぎることだけでなく、少なすぎることも問題だと指摘します。

高橋 量を少なく出す「過少使用」も問題です。過少があると、帳簿の上では過剰が打ち消されて目立たなくなります。さらに、品質のばらつきにもつながります。いつ来ても同じ品質、同じ量で出すことが、飲食店の基本です。

渡邉は、原価管理を3つのレベルに分けて説明しました。レベル1は、月の売上と仕入れ額から原価率を出す段階です。レベル2では、メニューの出数から理論原価※を計算し、実際の原価との差を把握します。レベル3では、どの食材でその差が出ているかを品目別に突き止めます。

※理論原価:レシピ通りに食材を使った場合に、本来かかるはずの原価。

渡邉 外食企業の85%以上は、レベル2までの管理にとどまっています。差があることは分かっても、どの食材が原因かまでは分からないんです。福しんさんには「HANZO 原価分析」を導入していただき、店舗別・食材別に、過剰使用と過小使用が分かるようにしました。

HANZO 原価分析の画面

当日は、「HANZO 原価分析」の画面も紹介しました。HANZO 原価分析は、理論原価と実際の原価の差を、店舗別・食材別に表示するサービスです。過剰使用・過小使用を相殺せずに表示するため、高橋氏が指摘した「過少に隠れた過剰」も見つけられます。画面は本部・エリア・店舗ごとに表示できるほか、課題のある食材や店舗を一覧で確認できます。このほか、店舗と本部がやり取りする機能や、店舗の評価を可視化するランク機能も備えています。

ねぎ、豚肉、スープ。福しんが原価差異を4分の1にした3つの改善

福しんは、「HANZO 原価分析」を導入後、食材別の差を見ながら、本部と店舗で改善を重ねてきました。高橋氏は3つの改善事例を紹介しました。

1つ目は、手で盛る食材を量るよう、現場に声をかけたことです。

高橋 ねぎ、玉ねぎ、味噌、ひき肉など、手で盛る食材を量らずに使っている店舗が多くありました。「HANZO 原価分析」の導入で差異が実際に見えるようになったことで、「この店舗のこの食材がぶれている」とはっきり分かります。そこで、現場に計量を徹底するよう声かけを行いました。味噌ラーメンでは、レードル(お玉)の裏に付いた味噌をしっかり落としてから入れるように伝えただけで、使用量が大きく減りました。結果を店舗の画面で確かめられるので、行動が変わるんです。

2025年1月と12月を比べると、客数は108.8%に増えました。麺と米の使用量は客数に合わせて増えた一方、ねぎは98.6%、玉ねぎは99.9%にとどまっています。使いすぎの傾向があった食材が、レシピ通りの量に近づいたことになります。

2つ目は、豚肉のポーション(1人前の使用量)の見直しです。

高橋 以前は、生姜焼きは120g、肉野菜炒めは60g、肉チャーハンは80gと、メニューごとに豚肉の量がばらばらでした。仕込みにも保管にも無駄が出ていたんです。そこで、すべてを60gの倍数にそろえました。60g単位のポーションだけを用意すればよくなり、スタッフが考える時間も、仕込みの時間も短くなりました。ロスも減っています。

3つ目は、自社工場から店舗に届けるスープの規格です。福しんは工場でスープを炊いて濃縮し、店舗で水を加えて使っています。

高橋 以前は、1Lの原液に29Lの水を加えて、30L単位で作るルールでした。閉店間際に30L作ると、大量に捨てることになります。実際、レシピの1.37倍のスープを使っていました。配送の効率を考えて大袋にしていたのですが、廃棄の金額を計算すると、半分の量で届けて仕込むほうが、全体では安くなることが分かりました。
規格を0.5Lの原液と14.5Lの水に変えた結果、スープの使用量はレシピ通りの1.00倍になりました。

これらの取り組みを経て、2025年7月と2026年7月を比べると、売上は104.4%、客数は104.3%に伸びました。一方で、原価差異の金額は1年前の23.4%と、約4分の1に減っています。売上に占める原価差異の割合も、2.04%から0.46%に下がりました。

浮いた原価で給与を上げ、値上げの幅は抑える

高橋氏は、この成果を現場の力だと語ります。

高橋 何より現場のスタッフが頑張ってくれたおかげです。原価を抑えられれば、人件費や最低賃金の上昇に対応しながら、他社よりも値上げの幅を小さくできます。

最後に今後の展望を尋ねられ、高橋氏は次のように締めくくりました。

高橋 最低賃金が上がるなかで、スタッフや店長、マネージャーの給与を上げていく必要があります。そのためには、価格の改定も必要です。提供価値を高めながら、上げ幅は他社より抑える。そういう前向きな値上げを目指します。提供のスピードもさらに上げ、オペレーションを改善して、お客様に喜んでいただける店をつくっていきます。「HANZO 原価分析」で数字が見えるようになってから、商品開発やオペレーション改善のスピードはぐっと上がりました。

渡邉 無駄なコストを抑える原価コントロールは、お客様にも、働くスタッフにも、経営者にもよい取り組みです。私たちも「HANZO 原価分析」を通じて、本部と店舗が同じ数字を見ながら改善を続けられるよう、これからも支えていきます。高橋社長、貴重なデータとお話をありがとうございました。


「HANZO 原価分析」について

HANZO 原価分析は、仕入れ・棚卸・レシピ・販売のデータを自動で集計し、理論原価と実原価の差を店舗別・食材別に可視化するサービスです。差異の大きい品目が明確になるため、原価改善に向けた方針を立てやすくなります。また、店舗ごとの原価差異をランクで表示する機能も搭載しており、店舗評価の基準として活用できます。

詳しくはサービスサイトをご覧ください。

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